ベイトソンの主張する円環的認識論に深い影響を受け、システム心理学を建設しようとしている臨床心理士は、以下のような理論的立場を取っている。
@ 直線的思考よりは円環的思考を重視する.心理的問題や現象の因果関係は,一方向的・直線的ではなく,双方向的・円環的に捉えるべきだと考える。
A 因果律よりも“適合性(fit)”という概念に基づく思考法を採用する。
B 問題(症状)行動の否定的解釈に対し,積極的に肯定的側面を加える。
C “時間”の要因を重視する.なぜなら、生命系についての諸研究は,生命過程が常に不可逆的であることを強調しているからである。
D “予測不能性”の概念を受容する.固定した目標に重点を置くよりは,偶然性に注目する。
E セラピストを,クライエントに作用し,影響を与える“力”として見る立場を捨て、“中立性”を維持する努力を続ける。
F “抵抗”についての伝統的な発想を捨てる.むしろ,“抵抗”をセラピストとクライエント(家族)の交流の一形態として理解する。
G 均衡状態よりも不安定さを好むように,自己変革しようと努める。
H 平衡維持(ホメオスタシス)の代わりに,“一貫性(coherence)”という新たな 概念を持ち込む。これは,システム内部および外部環境の両方向でのバランスが取れるように,システムの要素を一つにまとめあげることを意味している。
このような観点に立つ臨床心理士が提起しようとしているのは,進化的パラダイムであり,彼らの未来への強い志向性を示している。